【People01】高橋悠さん KAKULULU店主

Profile

高橋 悠(たかはし ゆう)

 

KAKULULU|COFFEE MUSIC GALLERY店主。1985年西ドイツ・ボン生まれ。文化学院卒業後、カフェなど飲食店に働きながら、企業などのプロモーション用音源を制作するミュージック・クリエイトの仕事をフリーランスとして始める。2013年、自身の表現の場を持つ事を考え始め、長年の夢であったカフェを始めることを決意。築45年の建物をリノベートし、2014年5月東池袋に「KAKULULU」を開店。

 

KAKULULU|COFFEE MUSIC GALLERY

この土地には成長できる余白がある。 

 

東池袋駅からほど近い場所に佇むKAKULULU(カクルル)。屋上付きの地下1Fから4Fからなるビル一棟のうち、カフェである1,2階を中心に現在は営業しています。不思議な語感の店名は「隠れる」の古語から来ています。この”LU”の響きは­ローマ字では使わない”ため音”。日本語らしさから遠ざけるためにわざと”RURU”ではなく”LULU”にしたそうです。 

このKAKULULUオーナーの高橋悠さんが語ってくれた東池袋という土地でお店を持つということへの強い想い。高橋さんがトークをしている間、深く静かな感動が会場に広がっていることを感じました。

 

大きな覚悟とともに歩み始めた小さな一歩

 

築45年という物件をリノベーションして作られたKAKULULU。「三角ビル」と高橋さんが呼ぶ通り、屋上付きの地下1Fから4Fまでのビルは三角形の形をしています。

 

初めてみた時はまさに廃墟でした。けれど、僕にはこの建物がもつポテンシャルを感じました。とても魅力的だったんです。

 

当時の地域の住民からも「買い手がつかないだろう」と思われてしまう程だったと言います。そんな場所を一年かけて形にし、ついに今年の5月1日にオープン。廃墟だったということが嘘かのように居心地のよい空間へと生まれ変わりました。

 

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オープン前は、東池袋というこの場所でお店を開く覚悟とプレッシャーが重くのしかかり本当にとても苦しかったです。オープンできた時はその頃の思いと多くの人達への感謝の気持ちとで、自然と涙が出てきました。今でもお客さんが来ない日などは不安になりますが、あの辛かった時の気持ちに比べれば全然苦ではありません。

 

高橋さんのお話の中には、「覚悟」という言葉がたくさん出てきました。それは、私たちの想像をはるかに超えるような重くて辛いものだったのでしょう。そのことがひしひしと伝わって来ました。けれど、こうも言えます。その「覚悟」の正体は実は可能性の「原石」であり、「原動力」であったのだと。それはこの言葉に表れているように感じました。

 

オープンしてから、改めてここがスタート地点なんだと思いました。ここまでこれたのも、この場所で続けていくという覚悟があったから。それがあったから大きな苦労やプレッシャーを背負ってでもがんばることができたんです。

 

僕が東池袋でお店を開いた理由

 

強い思いでお店をオープンさせた高橋さん。その原点は10年前に遡ります。

 

その頃は、街にかっこいい店員さんかいるカフェがたくさんありました。そこはまるで一種のサロンのようでした

 

当時のカフェとの出会いにより、自分もやりたいと思うようになったそうです。高橋さんがこの土地でカフェを開こうと思ったことの最大の理由、それは何よりこの場所が高橋さん自身の「ホーム」だから。ここが小さい頃から住み慣れた地域だったから。

 

表参道や原宿だったら、コンセプトがしっかりしていないとカフェはやっていけないと思いました。例えば「パンケーキのお店」といったように。僕はそんな風にコンセプトを限定してしまうことに対して怖さがありました。でも、ここなら「自分自身」をコンセプトにしてやっていけるんじゃないかと思ったんです。

 

実際に「自分自身をコンセプトにする」とはどういうことなのでしょうか?

 

例えば、KAKULULUのフードはブラジル料理が多いです。それは僕がブラジル料理を好きだから。けれど、もし再来年にアフリカ料理がアツイと思ったら、きっとそれをお客さまに出すと思います。そんな風に、僕自身の自分らしさを受け入れてくれる「余白」と「成長」があると場所だと感じました。

 

自分らしさを受け入れてくれる場所がある。そのことをどれだけの人が確信を持って言えるのでしょうか。この言葉は、高橋さんが長い間この場所で感じ、育んできたものがあるからこそ、言える言葉なのだと思います。

 

このホームが僕にとっての豊島区です。

 

そう高橋さんは言い切ります。

高橋さんのホーム。それは単純に帰る場所、長く住んでいた場所という意味だけではありません。高橋さんにとって、心の拠り所であり、寄りかかっても必ず支えてもらえるような安心感のある場所ということなのです。

 

この東池袋で点ではなく、面で戦っていきたい

 

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KAKULULUがオープンして5ヶ月あまり。そう、高橋さんご自身も言っていたように、ここからがスタートです。

 

みなさんがKAKULULUに来て、こういう店がほしかったと言ってくれることはとても支えになります。がんばろうと思います。でも、KAKULULUという一つの点だけでは戦えないと思っています。ご近所さんをはじめco-baさん、この地域でお店をやりたいという人たちと一緒に面で戦いたいと思っています。一緒に僕と戦いましょう。そして、東池袋をいい街にしましょう。

 

「面で戦う」という、地域の育て方、盛り上げ方。それは今後地域が生き残っていくための唯一の方法であり、本当の意味での地域の「豊かさ」につながっていくものではないでしょうか。

KAKULULUというキラキラと輝く点があるこの場所からどんな形の面が作られていくのか。それが今から楽しみでなりません。

 

(text:坪根育美)